社会生活を営みながらできる記録内観は、内観の一般化への一つの重要な方法である。しかしその普及の鍵となる効果について、調査データに基づいた研究は少ない。その効果を調べるために、三つの視点から検討した。 (1) 記録内観はどの程度パーソナリティの変容に影響があるのか (2) 記録内観は二ヶ月程度で、集中内観と同じ効果を期待できるといわれているが、この仮説は支持できるか (3) 集中内観は数年後もその効果が維持されているというが、記録内観ではどうか。
方法 : 調査のためA大学の心理学科生に夏休みの二ヶ月間にわたり記録内観を実施し前後にYG検査と内観経験評定用紙を施行した。
結果 : YG検査の数値の変化は記録内観の効果があったことを示し、一方評定用紙の数値は記録内観者の一人が集中内観の深いレベルに達する内観をしていることを示していた。また、3年後の内観効果に対する調査は、記録内観でもその効果は継続している事が分かった。
結論 : 記録内観によって正しい内観が可能で、集中内観と同じ質の内観の可能性もあることを確認したが、その効果は平均的には低いことが本研究を通し示唆された。