抄録
要介護高齢者の多くは慢性疾患を持ち,体調の崩れなどが原因で起こる食事量の低下や運動量の低下に
よって骨格筋量が減少し,その結果,転倒のリスクが増大し,低栄養状態に陥る危険性が増大する。また,
低栄養は免疫低下による感染や疾病の治癒遅延など,高齢者の予後を悪化させることが知られている。本
研究では高齢者施設に入居する61 歳から106 歳まで(平均年齢86.7 ± 6.2 歳)の要介護高齢者1,823 名を対象
とし,栄養状態と血液生化学検査指標,認知症高齢者の日常生活自立度,介護度,食事の形態の関連性を
検討した。
GNRI を用いて評価した低栄養リスク者は,男性67.0 %,女性が66.2 % であった。介護度が上がるにつ
れてGNRI は低下する傾向を示し,男性においては介護度4以上の群で著しく低下し,女性においては介護
度2以上で低下した。認知症高齢者の日常生活自立度が下がるにつれてGNRI は低下する傾向を示し,日
常生活自立度Ⅲ a 以上のグループでは,GNRI は日常生活自立度Ⅱbまでのグループに比べて有意に低かっ
た。また,提供している食事の形態が常食から一口大食,軟菜食,ソフト食,経管食へと嚥下機能の低下
に対応した食事になるにつれて,GNRI の指標も低下した。本研究の結果より,高齢者施設における要介護
高齢者の栄養状態は介護度や認知症高齢者の日常生活自立度,食事の形態と関連性があり,日常生活に必
要な身体機能等の低下に影響をおよぼす可能性が示唆された。
キーワード:栄養評価,高齢者,低栄養,高齢者施設