公開されている浸水想定情報を用いて,全国の感染症病床を有する372の感染症指定医療機関の大規模洪水時における浸水想定状況の調査を行った。その結果,河川計画の基準となる規模の洪水でおよそ4 分の1の医療機関で,想定される最大規模の洪水でおよそ3分の1の医療機関で浸水が想定されていた。この割合は,特定感染症指定医療機関と第一種感染症指定医療機関に限って見た場合には,いずれの規模の洪水でも増加し,想定最大規模では半数近くの医療機関で浸水することが想定されていた。また,中には最大想定浸水深が10 m を超える医療機関も見られ,こうした医療機関では,設備配置の工夫や垂直避難などの自衛的な対策のみでは浸水リスクに対応しきれない可能性があり,医療機関と行政の治水・防災部局,厚生・保健部局の連携が重要になると考えられる。