抄録
東日本大震災において発生した巨大津波による被害が生じてから10年が経過する中で,その実態解明が進められ今後の津波対策が議論されている。その概要について本文で紹介したい。
まず,津波発生メカニズムについて,地震動や測地のデータだけではなく津波波形を利用し逆解析が行われ,将来の評価のために津波断層モデルの特性化が提案されている。当時,気象庁から津波警報が発表されたがいくつかの課題があり,現在ではこの解決のためにリアルタイム観測と予測技術の向上などの研究が精力的になされている。
当時の写真・動画,調査データで記録された巨大津波の挙動およびその被害は壮絶であった。津波に関連した複合的で連鎖的な被害過程や津波災害の誘因・素因の分類などを紹介し,今後の災害対策に役立てたい。特に,今回では,地形変化,津波火災,「黒い津波」など新しい災害像もあり,その実態を報告する。今後は,このような津波関連災害の予測や評価が重要であり,東日本大震災において得られたデータを活用して,従来方法の課題を克服するような研究が行われている。大震災の直後に,津波対策の2 つのレベルや「津波防災まちづくり法」が国として
も提案され,災害を繰り返さない取組が精力的に行われている。その際に,事前復興計画にも反映するためにも安全レベルの事前の合意形成が重要となっている。