自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
Print ISSN : 0286-6021
報告
風水害時の避難に伴う犠牲者について
牛山 素行
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2022 年 41 巻 3 号 p. 189-202

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抄録
筆者は1999~2020年の日本の風水害犠牲者についてのデータベースを構築してきており,これまでに1,465人について分類してきた。本報告では,このデータベースを元に,風水害時の避難に伴う犠牲者の特徴を解析した。なお,この報告で「避難」とは,危険を避ける目的で自宅から他の場所に移動することである。1,465人の犠牲者のうち,132人が避難を行っていたと推定された。その内訳は,避難途中で被災した犠牲者が84人,避難した場所で被災した犠牲者が24人,避難した場所から外出して被災した犠牲者が17人だった。市町村が指定した避難所で被災した犠牲者はいなかった。避難した場所が,災害の危険性がある場所だった犠牲者は,少なくとも18人だった。彼らは,避難する場所の判断を誤った可能性がある。避難を行っていたと推定された犠牲者のうち,結果的に自宅が倒壊しなかった人は,少なくとも69人だった。ただし,これらの家屋はすべて災害の危険性がある場所に立地しており,避難しない方がよかったとまでは言えない。自宅から避難することが常に最善ではなく,その場所や状況に応じた対応が必要である。
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© 2022 日本自然災害学会
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