抄録
本研究は,令和6年能登半島地震における津波避難の実態について明らかにする。津波避難は学術的,社会的関心を集めてきたテーマであり,令和6 年能登半島地震はまさしく深刻な津波の被害を受けた事例である。そこで,石川県で津波避難の実態と,災害情報がどのように津波避難に寄与したかを解明するため,住民を対象に社会調査を行った。著者らを含む研究チームと日本放送協会(NHK)金沢支局が共同で住民からデータを収集し,285名(男性:107,女性:140,不明:11)より回答を得た。その結果,回答者の約5 割はハザードマップで危険区域に指定されていない場所に住んでいたという状況でありながら,全体の約6 割が津波から避難していた。また,回答者の多くは家族と一緒に避難していた。災害情報については,避難のきっかけとなった情報によって回答者を3 つのカテゴリー:「周囲他者型」「直接的・メディア型」「直接的・内在的情報型」に分類した。これらの結果から,今後の防災への示唆について述べる。