自然災害科学
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洪水常習地帯における防災集団移転促進事業の導入プロセスにおける制度面の課題と実態
荒木 笙子白石 レイ大津山 堅介
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2025 年 44 巻 1 号 p. 9-18

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抄録
本稿では,防災集団移転促進(以下,防集)事業のうち,近年実施された住宅を失う前の移転である「事前防集」の3 事例(島根県美郷町,島根県江津市,秋田県大仙市)を対象に,実施前後の空間変容や実施プロセス,コミュニティの観点からの分析を踏まえて,持続可能な移転が実現できているかどうか,さらに被災前の予防的移転に向けた示唆を得ることを目的とした。防集事業の実施は金銭面での負担への配慮度合いが自治体により異なること,また移転先の決定についても集約された場合と元の集落に留まる場合があり,持続可能性には課題が残る。さらに実施プロセスにおいてコミュニティの一部に分断が見られる場合があり,戸数要件と実被害の程度の差によるものと考えられる。今後は防集事業という枠組みにこだわらず,長期的な管理や広域的な視点を加えながら個別移転のメリットも取り入れながら枠組みを考える必要がある。
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