抄録
災害は,経済的および環境的要因によって引き起こされる典型的な人間の移動プロセスを一
時的に加速させ,その影響は,災害多発地域における人口増加により,21世紀において特に顕
著であると言える。社会は,災害リスクの高いコミュニティを意図的に移転させることで,こ
うした移動の影響を最小限に抑えようと努めてきたが,気候変動によってますます移転の必要
性が議論されうると言える。しかしながら,移転は議論を巻き起こし,しばしば不協和を生じ,
公平性と正義に関する疑問がつきまとう。本稿では,こうした移転とそのマネジメントに関わ
る主要な懸念点,すなわち自然科学,リスクに関する意思決定,場所との関係性,移転プロセ
スの詳細,そして歴史的,社会的,政治的背景を要約した枠組みを簡潔に提示することを目的
とする。最後に,米国カリフォルニア州における山火事と海面上昇に関する気候変動への対応
について考察したい。和訳:大津山堅介(東京大学先端科学技術研究センター特任講師)