抄録
【目的】脳梗塞を来し,頸動脈に可動性プラークを認めた本態性血小板血症(ET)の1例を経験したので報告する.【症例】49歳男性.右上肢不全麻痺,失算を主訴に当院神経内科を受診した.頭部MRI上,左大脳半球に多発性の急性期脳梗塞を認めたため入院となりedaravone,低分子デキストランの点滴が行われた.血小板数が92.3万/μlと高値であり,ETと診断され,hydroxyureaの内服が開始された.第4病日に施行された頸動脈エコーにて左総頸動脈から内頸動脈起始部に可動性部分をもつ不安定プラークを認めた.本病変が塞栓源となった脳塞栓症と考えられ,第5病日に脳神経外科に転科となった.【結果】argatroban,aspirin,clopidogrelを開始し,頸動脈エコーによる厳重な経過観察を行ったところプラークの可動性部分は徐々に縮小し,第8病日には消失した.血小板数については,第22病日には52.2万/μlまで改善した.以後もaspirin,clopidogrelの内服にて加療を継続しているが,MRIによるフォローアップでは新たな梗塞の出現を認めず,症状も消失している.【結論】ETでは一過性脳虚血や脳梗塞を来すといわれており症例報告も散見されるが,我々の症例のように可動性プラークを合併したものの報告はなく,文献的考察を加え報告する.