Journal of Neuroendovascular Therapy
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症例報告
経静脈的塞栓術によってくも膜下出血を来した上錐体静脈洞部硬膜動静脈瘻の1例
山浦 生也尾崎 功垣田 寛人崔 永得前田 行雄
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2009 年 3 巻 1 号 p. 29-33

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抄録
【目的】上錐体静脈洞(superior petrosal sinus;SPS)に発生する硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula;dAVF)は稀である.小脳出血で発症し,経静脈的塞栓術で治療した後に ,くも膜下出血を来したSPS dAVFを報告する.【症例】65歳女性.激しい頭痛と浮動感にて発症し,頭部CTで脳室穿破を伴う小脳出血を認めた.脳血管撮影では内頚動脈海綿静脈洞部tentorial artery,上小脳動脈から流入し,主にSPSに流出するdAVFを認めた.瘻孔はテント切痕に存在する静脈に集中し,そのすぐ下流に存在する静脈瘤を経て主にSPSに流出していたが,一部は小脳出血の原因と考えられるpetrosal veinへ逆流していた.その静脈瘤を中心に流出路を経静脈的にコイルを用いて閉塞し,dAVFは完全に閉塞することができた.しかし,術後意識レベルが低下し,頭部CTでくも膜下出血と水頭症が認められた.瘻孔点で閉塞せず,わずかにその下流の静脈瘤で閉塞したため両者の間にある脆弱な流出静脈より出血したのか,あるいは静脈瘤を塞栓しているときに下流の流出静脈に急激な圧不均衡が起こり出血したと考えられた.【結論】出血発症のdAVFで危険な流出路を認めるものでは,瘻孔点の正確な見極めと十分な動脈側でのflow controlの後に慎重に塞栓術を行う必要がある.
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© 2009 特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会

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