2009 年 3 巻 3 号 p. 192-197
【目的】緊急止血のためにNBCAによる塞栓術が有用であった上顎顔面杙創の1例を経験したので報告する.【症例】患者は39歳男性.建設工事現場にて落下してきたパイプが顔面に刺入し救急搬送された.パイプは左眼窩内側より左上顎洞を貫通し,左耳介下方の皮下に到達していた.パイプ抜去後,左顎動脈より多量の出血を認め,コイルによる止血を試みたが困難であった.NBCAによる緊急止血に際して,頭皮の血流障害を予防するため左浅側頭動脈にコイルを留置し,引き続き25%NBCAを外頚動脈本幹から顎動脈に注入し完全な止血を得ることができた.【結論】NBCAを用いた塞栓術は,コイルによる止血が困難な例に有効な場合があり,緊急止血が必要な急性動脈出血に対しては考慮すべき方法であると考えられる.