抄録
【目的】内頚動脈瘤に対する母血管閉塞中にコイル近位端の直線化現象を呈した症例を報告する.【症例呈示】症例は69歳,女性.左内頚動脈海綿静脈洞部に最大径15mmの未破裂脳動脈瘤を認め,endovascular trappingを施行することとした.瘤遠位側の母血管閉塞施行中,3本目のコイルとして内頚動脈径より1mm大きい5mm径,10cm長のコイルを用いたところ,残り3cmの時点でコイル硬度が急激に上昇し,硬い針金のようになった.直線化した部分はカテーテルを引き戻してそのまま動脈瘤内に留置した.その後は瘤内にコイルを追加留置した後,瘤近位側を血管径以下のコイルを用いて閉塞することで,endovascular trappingが完了した.【結論】規定の形状より小さなスペースに伸長防止(SR)機構のついた長いコイルを挿入していく場合には,SR線の相対的な短縮により,コイル近位端に直線化現象が生じ得ることが実験的に証明されている.本例においては母血管径より大きなコイルを畳み込むように入れることでこの現象が生じたものと考えられた.