抄録
【目的】内頚動脈-前脈絡叢動脈破裂脳動脈瘤コイル塞栓術後に重度の健忘症候群を呈した症例を報告する.【症例】34歳,男性.くも膜下出血で発症し,多発脳動脈瘤を認め,内頚動脈前脈絡叢動脈分岐部瘤を含めた計3箇所の動脈瘤に対し,コイル塞栓術を施行した.術中に一時的な前脈絡叢動脈の閉塞を認め対処したが,術後,見当識障害,近時記憶障害や記銘力障害,遂行機能障害を認めた.MRIでは右内包膝部,脳梁膨大部等に多発性梗塞巣を認めた.【結論】本例は後交通動脈が未発達で前脈絡叢動脈から視床灰白隆起動脈が分岐していたために,同血管の一時的な血行途絶が直接的に辺縁系のPapez回路を損傷し,健忘症候群が生じたと考えられた.