2013 年 7 巻 2 号 p. 75-80
【目的】closed-cell stentは屈曲した頚動脈狭窄症に対しては適していないとされているが,一定の見解は得られていない.この研究では,closed-cell stentを用いた頚動脈ステント留置術において頚動脈の屈曲度と術後の拡散強調画像の微小脳塞栓の関係を検討する.【方法】当施設でclosed-cell stentを用いて頚動脈ステント留置術を施行した連続93症例を対象とした.総頚動脈と内頚動脈からなる角度(Angle A),内頚動脈近位部の角度(Angle B),Angle AとAngle Bを加算した角度(Angle A+B)を屈曲係数とした.屈曲係数と拡散強調画像の微小脳塞栓の関係と,receiver operating characteristic曲線から屈曲係数のカットオフ値,微小脳塞栓のオッズ比を検討した.【結果】微小脳塞栓をきたしたのは93例中18例(19.4%)であった.微小脳塞栓はAngle B(65.6±24.2°,47.9±25.3°;p=0.009)とAngle A+B(99.0±39.0°,76.2±33.6°;p=0.028)と有意に相関したが,Angle A(33.4±17.6°,28.2±13.7°;p=0.174)とは相関しなかった.Angle BとAngle A+Bのカットオフ値はそれぞれ40.5°と60.5°であり,オッズ比はAngle Bが40.5°以上では4.146,Angle A+Bが60.5°以上では9.020であった.【結論】closed-cell stentを用いた頚動脈ステント留置術はAngle BとAngle A+Bの角度によって拡散強調画像の微小脳塞栓の発生に有意に関与していた.