抄録
【目的】妊婦に対する脳血管内治療には,放射線被曝や造影剤,抗血栓療法など,さまざまな問題が存在する.今回,人体ファントム(ランドファントム®)を用いて下腹部被曝線量を測定し,胎児に与えうる放射線被曝の影響につき検討したので,自験例2例とともに報告する.【方法】ランドファントム®と熱蛍光線量計素子を用いて,頭部血管造影(右上腕穿刺)・脳血管内治療に準じた透視・撮影を行い,生殖腺に相当する部位における被曝線量を計測した.【結果】頭部(外後頭隆起周辺)で最大約800 mGy程度の被曝線量に対し,生殖腺相当部位の下腹部における被曝線量は平均0.05 mGy程度であり,妊娠中であっても胎児に与える影響は極めて低いことが予想される結果であった.【結論】妊婦に対する脳血管内治療に対して胎児に生じる被曝の影響は極めて低いと考えられた.妊娠中の脳血管内治療には,被曝以外にもさまざまな問題はあるものの,諸注意点に留意すれば安全かつ有効に治療を行うことが可能と考えられる.