保健医療科学
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特集
日本における医療介護連携の課題と展望
integrated careの理論をもとに
大夛賀 政昭 筒井 孝子
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 65 巻 2 号 p. 127-135

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抄録

2013年8 月の社会保障制度改革国民会議の報告書に示された日本における地域包括ケアシステムは,国際的にはintegrated care理論に基づくものとして捉えられる.ここで示されるintegrated careとは,すべての人々が自立してQOLを維持しながら生活することの支援を指すが,コストのかかる急性期医療や不適切な治療に対する要求を抑制することを目的とするケア提供システムのひとつのデザインと考えられている.  前述の報告書で示された地域包括ケアシステムは,在宅等の住み慣れた地域で患者や高齢者の生活を支えるために,自助,互助だけでなく,共助としての医療や介護サービスを含んだシステムとして構築するというものであることから,integrated careに加えて,地域を基盤とするというcommunity based careをも含むものとして位置づけられるものといえる.  本稿では,国際的に示されてきたintegrated careの概念整理を通して,日本の地域包括ケアシステムの位置付けを示すと共に,この概念に基づくサービス提供モデルや機能の紹介を通して,今後の日本における医療介護連携の推進に向けた示唆を得ることを目的とした.  研究の結果,integrated careに係わる研究のレビューからは,医療介護連携は,国際的にも,いずれの先進諸国においても大きな課題であることが示された.また,日本における医療介護連携の推進には,integrated careのフレームワーク(水平/垂直,linkage/coordination/full integration)を使って,日本の各地域の特性に合致したサービス提供モデルや機能を創発していくこと,そして,その評価による検証を通した方法論の成熟が求められることが示唆された.  また,日本では入院医療体制における機能分化が,今後一層進むことを鑑みると,要介護者に対する切れ目のないケアのマネジメントを実現するためには,患者の入退院の経過を踏まえたケアマネジメントプロセスを明らかにし,このマネジメント機能を強化するために,医療のみならず,地域における介護の両面を踏まえた情報共有を支援するための具体的なツールの開発や,市町村が中心となって総合的にこれらを支援する取り組みが重要となってくると考えられた.

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© 2016 国立保健医療科学院
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