保健医療科学
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医薬品・医療機器の費用対効果評価の試行的導入
福田 敬
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2017 年 66 巻 1 号 p. 34-40

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抄録
日本の国民医療費は2013年度に40兆円を超え,増加を続けている.その理由の一つには高齢化が挙げられるが,これと同等またはそれ以上に関連していると考えられるのが,新規医療技術や医薬品等の導入による医療の高度化である.医療技術の進歩は,生存年数の延長やQOL(Quality of Life)の向上など患者や国民に多くのメリットをもたらしているが,一方で医療費の増加に寄与している.諸外国においては,イギリスのように,医療技術や医薬品等の費用対効果の評価を行い,公的医療保障制度でカバーする技術の範囲や償還価格の設定等に反映している国もある.
日本でも中央社会保険医療協議会(中医協)において,2012年に費用対効果評価専門部会が設置され,費用対効果の評価対象とする技術等の選定方法,評価手法,評価結果の活用方法等について議論されてきている.2016年4 月からは医薬品・医療機器について費用対効果評価の試行的導入が開始された.この試行的導入では,評価に時間がかかることにより保険収載が遅れるようなことがないように,これから承認される新規の医薬品や医療機器ではなく既収載品目の中から条件に沿って選定した品目を対象としている.また,評価結果を保険収載の可否ではなく,償還価格の調整に利用する方針となっている.
評価プロセスとしては,まず対象品目の製造販売業者が分析ガイドラインに沿って費用効果分析を実施してデータを提出し,これに対して,公的な専門体制により中立的な立場から再分析を実施する.これらの分析結果は,中医協の下に新たに設置された「費用対効果評価専門組織」に報告され,ここで専門的な見地から総合的評価が行われる.評価結果に基づき価格調整がなされる予定である.また今後は高額な医療機器を用いる医療技術の評価なども評価対象となっていくものと想定される.
医療技術や医薬品等の費用対効果の評価とその応用は,技術進歩と医療費支出のバランスを保ち,国民皆保険制度を維持するためにも必要とされるものであり,重要なのはこのような評価が適切な手法やデータに基づいて実施されることである.
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© 2017 国立保健医療科学院
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