保健医療科学
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特集
日本の公衆衛生の第一線機関としての保健所
その発展への国立保健医療科学院の貢献
武村 真治逢見 憲一曽根 智史
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2020 年 69 巻 1 号 p. 2-13

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抄録

日本において,保健所は1937年に初めて設置され,それ以来,公衆衛生の第一線機関として,地域住民の健康水準の改善に貢献してきた.また国立保健医療科学院は保健所職員に対する養成訓練を継続的に実施してきた.本稿では,保健所の活動を概観するとともに,国立保健医療科学院がどのように保健所や日本の公衆衛生システムに貢献してきたかを論述する.

地域保健法は,1947年の保健所法の改正法として1994年に制定され,これによって,市町村は地域住民に身近な公衆衛生サービスを実施し,保健所は広域的サービス,専門的技術を要するサービス,多種の保健医療専門職によるチームワークを要するサービスを提供することとなった.保健所は,都道府県,指定都市,中核市,地域保健法によって定められる市,特別区によって設置され,2019年 4 月 1 日現在, 47都道府県に359,107市・特別区に113,計472の保健所が設置されている.保健所数は減少傾向をたどり,この30年間でおよそ半数に減少した.

保健所は,人を対象とした業務から環境を対象とした業務まで,地域住民の健康に関わる幅広い業務を実施している.具体的には,地域保健に関する思想の普及及び向上,人口動態統計等の統計,栄養の改善及び食品衛生,環境衛生,医事及び薬事,保健師,公共医療事業,母性及び乳幼児の保健並びに老人の保健,歯科保健,精神保健,治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健,エイズ,結核,性病,伝染病,その他の疾病の予防,衛生上の試験及び検査などである.また1994年から,健康なまちづくり,専門的かつ技術的業務,情報の収集・整理・活用,調査研究,市町村に対する援助及び市町村の相互間の連絡調整(都道府県保健所の場合),地域における健康危機管理の拠点としての機能の強化,企画及び調整の機能の強化に関する業務が追加された.特に健康危機管理に関する機能は顕著に強化されている.

保健所の職員は,保健所長を筆頭に,医師,歯科医師,薬剤師,獣医師,保健師,助産師,看護師,診療放射線技師,臨床検査技師,管理栄養士,栄養士,歯科衛生士,統計技術者などで構成される.保健所職員の数は,1989年に34,680人であったが,2017年現在は27,902人に減少している.保健師,薬剤師,獣医師,管理栄養士の数は若干増加しているが,保健所長を含む保健所医師の数は減少傾向が続いている.

国立保健医療科学院における保健所職員を対象とした主な養成訓練は「専門課程」と「短期研修」である.前者に関しては,保健所長の養成を目的とした 3 か月コースにおいて,保健所数や保健所医師数が減少している中,保健所長としての高い資質を備えた修了生を毎年約20名,継続的に輩出している.また公衆衛生実務の最新の知識,技術の修得を目的とした 2 ~28日間の短期研修では,健康危機管理など,新たに発生した健康問題や地方自治体のニーズを素早く察知し,それらに対応するための質の高いプログラムを企画,実施し,毎年多くの人材を育成し,その数は年々増加傾向にある.国立保健医療科学院は,今後もこのような地域のニーズに適合した質の高い養成訓練を継続的・安定的に実施していく所存である.

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