2020 年 69 巻 1 号 p. 25-32
近年,自然災害は増加傾向である.建築物,耐震基準や防波堤などのハード面の対策が,災害の被害を減少させるために重要であるが,それだけでは限界がある.そのような中,ソフト面の対策にも注目すべきことが指摘されている.本稿では,健康の社会的決定要因の1つとして注目されているソーシャル・キャピタルに焦点を当て,被災地での影響を概観することを目的とした.災害からの回復の過程である復興期の社会的・物理的環境への適応や健康の回復,地域のインフラとコミュニティの回復スピードは,ソーシャル・キャピタルが豊かな地域ほど早いことが示されてきている.更に,ソーシャル・キャピタルと,そこからもたらされる社会的サポート,組織参加,インフォーマルな社会統制は,災害が起こる前の平時からの個人およびコミュニティの災害への備えと回復力(レジリエンス)を向上させることも示されている.一方,ソーシャル・キャピタルには負の側面もある.負の側面に注意を払いながら,平時からソーシャル・キャピタルの醸成を促す地域づくりが震災の備えに必要である.