保健医療科学
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論文
日本語版ASCOTによる要介護高齢者の社会的ケア関連QOLの測定と関連要因
森山 葉子 森川 美絵中村 裕美白岩 健田宮 菜奈子高橋 秀人
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2020 年 69 巻 5 号 p. 460-470

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抄録

目的:高齢者の健康や生活を効果的に支えるには,社会的ケアの評価が必須である.昨今,イギリスで開発された社会的ケア関連QOL(Social care-related quality of life; SCRQoL)を測定できるthe Adult Social Care Outcomes Toolkit(ASCOT)が世界的に用いられ始め,先般,我々はサービス利用者向けASCOT-SCT4(ASCOT four-level self-completion questionnaire)の日本語版を作成し,信頼性および妥当性を確認した.本研究の目的は,わが国において,ASCOT-SCT4を用いて測定したSCRQoLの結果,およびその関連要因を明らかにすることである.

方法:対象者は,A自治体が2016年12月に実施した日本語版ASCOT-SCT4を含む介護保険事業計画策定のための在宅介護実態調査(配布数2,370,有効回収数1,141(有効回収率48.1%))に回答した要介護・要支援認定者であり,そのうち65歳以上,かつ調査時点で介護保険サービスを利用していた819人を分析対象とした. SCRQoLを従属変数とした重回帰分析 (モデル 1 :共変量が性別,年代,要介護度,主観的健康感,経済的ゆとり感,同居か独居か,外出頻度,誰かと共に食事をする頻度,モデル2:モデル 1 に介護サービス利用満足感を追加)を用いて探索した.

結果:SCRQoLの平均値は0.58であった.重回帰分析によりSCRQoLと有意な関連のみられた要因を示すと,モデル 1 では,SCRQoLが高かったのは,性別では女性,主観的健康感はよくないに比してとてもよい,まあよい,経済的ゆとり感は苦しいに比してふつう,ゆとりあり,外出頻度ではほとんど外出しないに比して週 1 回,週 2 ~ 4 回,週 5 回以上,誰かと共に食事をする頻度はほとんどないに比して毎日,週に何度か,月に何度かであり,SCRQoLが低かったのは要介護度で要支援に比して要介護 1・2 ,要介護 3 - 5 であった.モデル 2 で有意にSCRQoLが高かったのは,主観的健康感はとてもよい,まあよい,経済的ゆとり感はゆとりあり,ふつう,外出頻度はほとんど外出しないに比して週 2 ~ 4 回,誰かと共に食事をする頻度は毎日,週に何度か,月に何度か,サービス利用満足感は, どちらともいえない・不満に比して,満足,どちらかというと満足であり,要介護 1・2 ,要介護 3 - 5 ではSCRQoLが有意に低かった.

結論:日本語版ASCOT-SCT4により測定したSCRQoLは経済状況をどう感じているか,主観的健康感,介護保険サービスに満足しているかといった,主観的評価と強く関連していた.また外出や誰かと一緒の食事の頻度が関連しており,社会とのつながりを促進する支援が必要であると考えられた.

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© 2020 国立保健医療科学院
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