安全な水道水の供給は公衆衛生の維持において必須である.水道水質に対する要求は新規の有害化学物質やリスク要因が認知されるに伴い更新される.そのような更新に際し,正確で最新の科学的知見を提示することは国立保健医療科学院・生活環境研究部・水管理研究領域における最重要事項の一つである.本稿では,我が国の水道水質管理における当院のこれまでの貢献を総括する.我が国における水道水質管理の概略を水質基準の歴史,現在の水質基準の基本的な考え方,病原微生物制御の方策,及び水安全計画策定に向けた取り組みの観点から説明する.また,近年生じた水質汚染事故並びに水系感染症集団発生事例を概説する.さらに,当院の貢献をいくつかの具体事例を挙げながら詳細に説明する.具体事例としては,近年当院で取り扱った水道水質基準策定時に活用する各種成分の摂取における水道水の寄与率の設定,水道水の飲水量に関する全国調査,並びに水道水質基準において規制対象とする農薬やその他化学物質の選定に係る検討の成果を報告する.以上の経緯を踏まえ,当院に期待される今後の研究面及び研修面における活動内容について展望を述べる.