保健医療科学
Online ISSN : 2432-0722
Print ISSN : 1347-6459
ISSN-L : 1347-6459
特集
自治体の健康増進計画に関する国立保健医療科学院の研修
石川 みどり 横山 徹爾
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2022 年 71 巻 5 号 p. 416-431

詳細
抄録

本稿の目的は,1健康日本21(第二次)における自治体の健康増進計画に関する国立保健医療科学院(以下,科学院)の研修について,平成25年度から令和 4 年度までの1研修のテーマの変遷ならびに,2研修を進めた方法をふりかえること,2科学院研修を受講した自治体の健康増進計画の推進への効果を,受講者数が多い・少ない自治体群それぞれの状況を,厚生労働省が健康日本21(第二次)最終評価の際に行った,自治体の取組状況の評価のための調査,国民健康・栄養調査の公表結果を活用して比較分析すること,3科学院研修の課題と今後の展開について考察することとした.

健康日本21研修の主テーマは,優先度の高い健康課題に関連する食事・食生活の課題解決に向けた対策の企画と体制づくりであった.研修を進めた方法は,1行政栄養士業務指針において,成果のみえる栄養施策に向けた要素を示した.2行政栄養士業務指針を実践するための資料集を作成した.3既存データ健康増進計画等のモニタリング・評価・見直しのために各種資料・関連ツールを作成し,活用して統計学的分析を行った.4科学院長期研修(研究課程)において自治体が上記分析を進めるための支援を行った.5栄養・食生活課題改善のための対策についてワークシートを用いて計画,調整を行った.さらに,6科学院研修内容を深め,普及のために,日本公衆衛生協会,日本栄養士会等,他組織と協力した事業を行った.

自治体の健康増進計画の状況への効果については,受講者数が多い群は,少ない群に比べ,地域間の格差を確認した市区町村,在勤者への施策を実施した市区町村の割合が有意に多かった.また,国民健康・栄養調査の分析の結果, 男性のBMIは,平成24年に両群の差はなかったが,平成28年に,受講者数が多い群が有意に低かった.女性の歩数は,平成24年には両群の差はなかったが,平成28年に,受講者数が多い群が有意に多かった.一方,女性の食塩摂取量は,両群ともに減少したものの,平成28年に,受講者数が多い群で有意に多かった.野菜摂取量,習慣的な喫煙者の割合は,男女とも両群間の各年の値と変化に有意差はなかった.

いくつかの限界はあるものの,科学院研修の長期的な評価のために,既存調査の公表データを用いて評価できる可能性が示唆された.その為には,都道府県・市区町村の健康増進計画の各種指標の状況が,策定時,中間・最終評価時に調査され,適切なデータが継続的に公表される必要があるだろう.また,今回は, 2 つの短期研修における長期的評価の試みを行ったが,科学院研修全体における標準的な長期的評価の方法の検討が必要であろう.

著者関連情報
© 2022 国立保健医療科学院
前の記事 次の記事
feedback
Top