保健医療科学
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新型コロナウイルス感染症流行後のHIV感染の発生動向とエイズ流行終結に向けた戦略
田沼 順子 松岡 佐織
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キーワード: HIV, エイズ, UNAIDS
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2023 年 72 巻 2 号 p. 80-89

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抄録

UNAIDSの「世界エイズ戦略2021-2026」では,HIV感染者の差別根絶のほか,2025年までにHIV感染者の95%以上を診断し,診断された95%以上を治療につなげ,治療を受けている者の95%以上で血中ウイルス量を低く抑え,新規感染者を37万人に抑えるという数値目標が掲げられている.また,毎年Global AIDS Monitoringと呼ばれる世界的な調査を行い,各国のHIV感染者動向やエイズ対策の進達状況を評価している.それによると2021年末時点で世界の生存HIV感染者は推計3,840万人,新規HIV感染者は推計150万人であった.HIV新規感染者はCOVID-19パンデミック下でも減少を続けたものの,新規HIV感染者の減少速度は大きく鈍化した.日本では,男性同性間感染を中心に流行が続いているが,2013年をピークに新規HIV感染報告数は減少傾向にあり,2021年の新規報告数は1,057人,うちエイズ報告数は約30%で推移しており,診断の遅れが懸念されている.折しも,COVID-19流行後,保健所等での無料・匿名HIV検査がサービスの縮小を余儀なくされたため,その検査件数は2019年と比較して半減し,未だパンデミック前のレベルには回復していない.無症状感染者が十分に診断されないことで,近い将来エイズ報告数が増えるのではないかと危惧されている.

95-95-95指標やHIV罹患率は,UNAIDSが開発したソフトウエアSpectrum®を用いて算出することになっている.2021年の世界全体の95-95-95達成推計値は85-88-92であった.日本では95-95-95を上回るかそれに近い値に達していると考えられるが,Spectrum®で求められる一部の疫学パラメーターが不足しており,その対策が今後の課題である.

「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」は,過去 6 年ごとに改正されており,次は2024年の改正が見込まれている.複合的予防の推進,デジタルヘルスの活用,郵送検査を含むHIV検査体制の多様化,自治体の枠組みをこえた対策,当事者・市民参画の一層の推進が期待される.

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© 2023 国立保健医療科学院
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