2023 年 72 巻 2 号 p. 90-97
HIV感染者の予後は大きく改善した.国内ではすでに抗HIV療法(antiretroviral therapy:ART)による高い治療成功率と治療継続率が得られている.この予後の改善には,日和見感染症の管理の向上,HIV診療に関する医療体制の整備や抗HIV治療ガイドラインの作成,研修会の実施や診療に関する情報発信などさまざまな要因が貢献してきた.さらに,強力で安全性の高い新規抗HIV薬の登場は,治療成功率を向上させただけではなく,新しい概念と治療のオプションをもたらした.有効なARTを継続し血中HIV-1-RNA量が検出限界未満の症例は,性交渉を通じてパートナーにHIVを感染させないことが明らかになった.これはUndetectable=Untransmittable(U=U)と呼ばれ,これまでの常識を刷新するメッセージである.また,2 剤療法や持効性注射剤といった新しい治療法も登場した.このような成功にも関わらず,HIV感染症の診断からARTの開始,ART後のプライマリケアまでのすべてステップが成功しているわけではない.本総説では,ARTについて最新の知見も踏まえつつ,HIV診療の現状と課題について概説する.