保健医療科学
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日本のエイズ治療の拠点病院における抗HIV療法の優れた治療成績
横幕 能行
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2023 年 72 巻 2 号 p. 98-109

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抄録

エイズ治療の拠点病院は,HIVと共に生きる人々に対し主に医療サービスを提供してきた.2021年末時点で,都道府県によって377施設の拠点病院が設置されている.抗HIV療法は,主に拠点病院において,HIVと共に生きる人々に提供されている.高額な治療費負担は国民皆保険制度下の身体障害者手帳等の社会福祉サービスにより軽減されている.

全国の拠点病院を対象に行われたエイズ治療の現況調査によると,拠点病院には2021年には約28,000人のHIVと共に生きる人々が定期通院中であり,これらの施設での抗HIV療法の継続率と治療の成功率はそれぞれ94%及び99%以上であることが明らかになった.また,この高い治療継続率と治療成功率は,施設の場所や定期通院者数に依存せず,抗HIV療法の治療成績の高い水準での均てん化が証明された.日本は,UNAIDSが2030年までの達成を目標とした「95-95-95 targets」の 2 番目及び 3 番目の「95%」を達成できると予想される.このように,拠点病院は,抗HIV療法の提供により,日本の全てのHIVと共に生きる人々の平均余命と生活の質の向上に貢献してきた.

近年,抗HIV療法の進歩により,HIVと共に生きる人々に対する医療の主な目的は,糖尿病,脂質異常症,AIDSに関連しない癌などの合併症や併存疾患の予防と治療となっている.ほとんどの拠点病院は,その地域で緊急および高度な医療を提供する役割も担っている.拠点病院でエイズ診療に従事する医師は,抗HIV療法のみならず他の疾患の管理へのエフォートが大きくなっており,現在の診療レベルの維持には負担が大きくなっている.また,拠点病院がHIVと共に生きる人々の全ての医療の課題に対処することは,その本来の病院機能を考えると必ずしも望ましくない.

日本の現在の抗HIV療法の高い成功率を維持するためには,HIVと共に生きる人々の診療が拠点病院に著しく依存している現状を是正する必要がある.拠点病院であるかどうかにかかわらず,すべての医療機関が拠点病院との連携のもと,HIVと共に生きる人々の診療に関わる体制への移行が望ましい. 同時に,その取り組みの過程で,抗HIV療法の治療成績等を評価可能な全国的なサーベイランス体制の確立と維持も重要である.

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© 2023 国立保健医療科学院
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