保健医療科学
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電磁環境の健康リスク評価の動向
牛山 明
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 72 巻 3 号 p. 224-232

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抄録

我が国においてはデジタルトランスフォーメーションがうたわれているが,その実現においては高速大容量の通信が可能な技術が必要である.その中でも無線電波を使用した通信は重要な基盤といえよう.我が国では2020年に高速かつ大容量の通信が可能な第5世代の通信規格(5G)が導入されて,現在全国に展開されつつある.5G通信は第4世代よりもより高い周波数帯(6GHz帯,28GHz帯)を利用することで通信速度が第4世代より高速化され,その利点により自動車の自動運転技術,遠隔医療(遠隔手術)などの技術も導入される予定であり,私達の生活をさらに豊かにする可能性を秘めている.無線通信をする際には,当然ながら電波を利用することになる.

また電力設備からの超低周波電磁波,テレビ・ラジオ放送による高周波電波も環境中での電磁環境を形成している.近年ではIH調理器の普及や,電気の充電のための無線電力伝送の実用化がみられるがいずれも電波の新しい利用形態である.これらの技術革新は私達の生活環境がますます電波や電磁環境によって溢れることを意味するため,市民の間にはこれらの電波が健康に影響を与えることに対する不安も一定程度存在する.一方で,科学的な根拠に基づき,生活環境中の電波の強さは管理されている実態もある.本稿では電磁環境の健康影響について現在の科学的根拠を整理し,電磁環境の健康に対するリスクを概説する.

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© 2023 国立保健医療科学院
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