2023 年 72 巻 4 号 p. 337-343
わが国では特定健康診査(以下,‘特定健診’と記載)の導入により,各施設の血液生化学検査の標準化が推し進められた.一般財団法人日本予防医学協会(以下,‘協会’と記載)は,労働衛生登録機関として日本全国で健康診断を行い,プライバシーマーク認証を受けている.今回,特定健診開始年度である2008年度を起点として,2017年度まで,特定健診を含む労働安全衛生法に基づく健康診断での検査結果を用いて個人変動を算出し,その結果から個人変動幅の算出を試みた.算出対象項目は血液化学成分のうちAST,ALT,γ-GT,総コレステロール(T-CHO),中性脂肪(TG),HDLコレステロール(HDL-C),LDLコレステロール(LDL-C),空腹時血糖(GLU),ヘモグロビンA1c(HbA1c, NGSP(国際標準)値),及び法定健診と同時に実施されることの多いクレアチニン(CRE),尿酸(UA)とし,さらに身体の全体的な状態を把握できるBMI(Body Mass Index)を加えた.
初めに2008年度から2012年度までの5年間を1区切りとして個人変動幅を算出した.算出結果の検証は,2009年度から2013年度までの各年を分析開始年度とした5群で算出した個人変動幅との比較で行った.その結果,各群と参照年度(2008年度検討開始群)の差は認められず(p>0.05)代表的な個人変動幅として当初の算出値を決定した.この値は,健常人から得られたものであり,適用は基準範囲内の検査値を示す個体に限られるが,健診結果の判断に一律で用いられている基準範囲の判断に加え,個人ごとに個人変動幅を超えて数値が上昇している場合等,健康状態の早期改善指導にも適用可能と推察する.特定健診で標準化された検査法の下に個人変動幅を設定できたことで,個人ごとの具体的な健康増進の指標となり,様々な活用が今後なされるものと推察する.