2024 年 73 巻 2 号 p. 166-167
目的:労災保険二次健診等給付における頸動脈エコー検査の費用対効果をマルコフモデルで評価した.
研究デザインと方法:二次健診等給付対象者を頸動脈エコー検査群と非検査群に分け,性別と年齢別(40歳,50歳,60歳,70歳)に分析した.マルコフモデルに投入するパラメーターは,頸動脈狭窄等病変有病率・罹患率,年間の死亡率,脳梗塞発症率,脳梗塞後死亡率,脳梗塞再発率,再発後死亡率,各状態(健常,脳梗塞後,再発後)での費用と効用値であり,文献(可能な限りメタアナリシス),生命表,地域脳卒中登録事業報告より推計し,費用は医療給付実態調査,診療報酬点数表・薬価基準で推計した.また,頸動脈狭窄等病変判明後の治療は内科的治療(保健指導を含む)とした.
結果:40歳,50歳,60歳,70歳の10年間,割引率2%のICERは,それぞれ男性で22.7,4.4,1.2,0.3百万円/QALYであり,女性で46.4,15.3,4.9,1.2百万円/QALYであった.
結論:今回のマルコフモデル分析では,男性は50歳以上,女性は60歳以上で頸動脈エコー検査のICERが閾値(5百万円/QALY)以下となった.