2024 年 73 巻 2 号 p. 68-78
健康日本21(第三次)では,社会の多様化にともなって健康課題も多様化する中で,「誰一人取り残さない健康づくり」の展開(Inclusion),「より実効性をもつ取組」の推進(Implementation)に重点が置かれている.健康日本21(第三次)のビジョンは,「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」であり,令和6~17年度の12年間の予定である.基本的な方向性は,ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり,そして社会環境の質の向上の上に,個人の行動と健康状態の改善を目指し,最終的に健康寿命の延伸と健康格差の縮小を達成し,ビジョンを実現するための健康づくり運動を進め,「誰一人取り残さない健康づくり」を推進する.健康日本21(第三次)では,女性の健康,自然に健康になれる環境づくり,他の計画や施策との連携も含む目標設定,アクションプランの提示,個人の健康情報の見える化・利活用について記載を具体化といった新たな視点が取り入れられた.健康日本21(第三次)の目標は全部で51項目設定された.目標については,健康に関する科学的なエビデンスに基づくこと,継続性や事後的な実態把握等を加味し,データ源は公的統計を利用することを原則とし,目標値は,直近の傾向や科学的なエビデンス等を考慮し,原則として健康日本21(第二次)で未達成のものは同じ目標値,目標を達成したものはさらに高い目標値として設定されている.新たな目標として,睡眠時間が十分に確保できている者の増加,COPD(慢性閉塞性肺疾患)の死亡率の減少,「健康的で持続可能な食環境づくりのための戦略的イニシアチブ」の推進,健康経営の推進,骨粗鬆症検診受診率の向上が挙げられる.評価方法や時期等に関しては計画策定時に決めておくべきであり,健康日本21(第三次)ではそれがなされており,令和6年国民健康・栄養調査の結果を最新値としてベースラインを提示する.全ての目標について,計画開始後6年である令和11年を目途に中間評価を行い,計画開始後10年後の令和15年(2033年)を目途に最終評価を行うことで,目標を達成するための諸活動の成果を適切に評価し,その後の健康増進の取組に反映することが可能となる.評価や分析に応じて,基本方針も必要に応じて更新するなど,PDCAサイクルを通じてより効果的な健康づくりを実施していく.