2024 年 73 巻 4 号 p. 273-282
目的:ナッジ理論を活用した各種検診への受診勧奨が着目されている.本報告は,長崎県佐世保市が作成したナッジ理論を活用した歯周疾患検診受診勧奨ハガキ作成の取組みについて,歯周疾患検診受診率の年次推移とともに報告する. 方法:佐世保市は,ナッジ理論を活用した受診勧奨ハガキを作成し,2021年10月末に40歳,50歳,および60歳の者,合計3,642人に送付した.受診勧奨ハガキを持参して歯周疾患検診を受診した131人を対象として,受診勧奨ハガキの着目点等に関するアンケート調査を実施した.また,佐世保市衛生統計を用いて歯周疾患検診受診率を算出し,年次推移を検討するためJoinpoint解析を実施した. 結果:歯周疾患検診受診者のアンケート調査の結果,45.9%の者は「1年以上通院していない」であった.歯周疾患検診受診のきっかけとして「無料だから」,および歯科診療所の選択理由として「近所だから」とした者の割合は,40歳の者で大きかった.ナッジ理論を活用した受診勧奨ハガキの着目箇所は,受診費用が無料であることを明示した個所が最も着目されていた.歯周疾患検診受診率は,ナッジを活用した受診勧奨ハガキの送付開始した2021年度から有意に増加していた. 結論:ナッジ理論を活用した歯周疾患検診への受診勧奨ハガキでは,「無料」の箇所が最も着目されていた.また,受診勧奨ハガキの送付開始年度から歯周疾患検診受診率は有意に上昇していた.