目的:健康日本21(第二次)に続き,健康日本21(第三次)の基本的な方向にも,「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられている.健康保持増進対策は,中⻑期的視点をもち,継続的かつ計画的に進める必要がある.このためには,PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act cycle)に沿って対策を進めることが重要である.効果的・効率的な地域の健康づくりや保健活動のPDCAサイクルの推進を図るため,国民健康保険の保険者努力支援制度の諸活動に事業評価が導入されている.しかし,先行研究においても,どのような活動が健康寿命の推移と関連するかは明らかとなっていない.そこで,本研究は,国民健康保険の保険者努力支援制度の諸活動の各事業評価スコアと健康寿命の推移との関連を地域(市区町村)レベルで明らかにすることを目的とした. 方法:本研究は,健康寿命の算定の誤差が大きくなる人口1万2千人未満(2021年)の自治体を除く1147自治体を分析対象とした縦断的デザインの地域相関研究である.2017年-2021年の国民健康保険の保険者努力支援制度の事業評価に基づき,市区町村が厚生労働省に提出した各年度の事業評価スコアを用いて,その割合を算出した.また,健康日本21の「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」の考え方に基づき,要介護2以上を不健康な期間とする「日常生活動作が自立している期間」を用いて,男女別に,2017年-2021年の65歳時の健康な期間の平均を算出し自治体の健康寿命とした.各事業評価スコアを説明変数,2017年の健康寿命,課税対象所得・可住地人口密度の対数を調整変数とし,重回帰分析を実施した. 結果:分析の結果,男女ともに,特定健診受診率・特定保健指導実施率・メタボリックシンドローム該当者及び予備群の減少率(男性:β=0.153, p<0.001,女性:β=0.087, p=0.003),地域包括ケアの推進(男性:β=0.059, p=0.043,女性:β=0.065, p=0.020)の事業評価スコア,第三者求償の取組(男性:β=0.059, p=0.041,女性:β=0.067, p=0.017)の事業評価スコアが高いほど,健康寿命の延伸が大きい傾向がみられた. 結論:特定健診受診率・特定保健指導実施率・メタボリックシンドローム該当者及び予備群の減少率,地域包括ケアの推進,第三者求償の取組の事業評価スコアは,健康寿命の推進との関連がみられた.これらの事業内容はPDCAに利用しやすく,健康寿命の延伸に寄与する可能性が示された.
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