脳神経外科と漢方
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症例報告
慢性硬膜下血腫に対する五苓散の改善効果の漢方医学的考察
原田 佳尚吉田 賢作新井 一
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2017 年 3 巻 1 号 p. 63-69

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抄録

慢性硬膜下血腫(CSDH)の再発・増悪予防に五苓散が有効である報告があるが,漢方医学的考察がなされた報告はない。今回,五苓散が有効であった症例からその要因の考察を試みた。81歳,男性。意識障害と右片麻痺で搬送され,頭部CTで両側CSDHを認めた。左穿頭手術を行い再発予防に五苓散を開始した。1ヵ月後の頭部CTは左CSDHの再発なく,右CSDHも改善傾向であった。CSDHの発生機序は,線溶系が亢進した血腫外膜からの持続的な血液成分の漏出や,浸透圧差による血腫被膜を介した髄液の流入などが想定される。血腫を瘀血とするだけでなく,津液である髄液の偏在や浸透圧の関与は水毒と考えられる。術前の頭部CTは血腫が低吸収域と高吸収域に二分しており,生体を物質的に支える赤色の液体と無色の液体が併存するととらえ,画像からも水毒が想定され得た。これら水毒徴候に利水剤である五苓散が有効であると考えられた。

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© 2017 日本脳神経外科漢方医学会
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