脳神経外科と漢方
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最新号
脳神経外科と漢方
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 郭 忠之
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 8 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    加味逍遙散は,『和剤局方』 が原典である逍遥散に牡丹皮と山梔子を加味した方剤である。虚弱体質な婦人で肩が凝り,疲れやすく,イライラや精神不安などの精神症状,ときに便秘の傾向のある諸症 (冷え性,虚弱体質,月経不順,月経困難,更年期障害,血の道症) に適応があるとされている。それ故,婦人科・内科・心療内科・精神科などで処方される機会が多いが,当科でも16例に効果が認められ,2例は男性であった。奏功例を,東洋医学的見地から詳細に顧みてどのような患者に効果が期待できるのかを検討してみた。

    また加味逍遙散ができた時代背景,男性例の奏功例,長期服用時に起こる特発性腸間膜静脈硬化症の副作用についても文献的考察を加えて報告する。

  • 石嶋 希美, 稲次 基希, 佐藤 陽人, 田中 洋次, 前原 健寿
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 8 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    【背景】 三叉神経痛に対しては,微小血管減圧術 (MVD) が確立した根治療法であるが,しばしば疼痛の残存・再発例を経験し,治療に難渋する。我々はそのような症例に対する漢方薬の効果を検証したので報告する。

    【対象と方法】 当院で2012年から2019年までに微小血管減圧術を施行した三叉神経痛174例のうち,術後に疼痛が残存もしくは再発した51例 (29.3%) を対象とし,漢方薬の治療効果を後方視的に検討した。

    【結果】 51例中36例 (70.6%) で漢方薬を使用し,五苓散21例,桂枝茯苓丸18例であった。全例で投与に伴う副作用は認めなかった。36例中漢方薬のみで疼痛がコントロールしえた症例は10例で,五苓散5例,桂枝加朮附湯3例,両者併用2例であった。15例で他剤との併用で疼痛がコントロールされ,11例で無効であった。漢方薬とカルバマゼピン (CBZ) 併用例のうち,疼痛がコントロールされた12例では,術前後で投与量が平均462.5 mgから225 mgへと有意に減少していた (p<0.01)。

    【考察】 三叉神経痛に対するMVD術後の疼痛残存・再発例では,特に高齢者で忍容性が高くないCBZの術前通りの投与は困難な場合が少なくない。我々は漢方薬を用いることで,より安全に疼痛のコントロールが可能な症例を複数経験した。MVD術後の疼痛再発,残存例では術前よりも疼痛が軽減している可能性があり,CBZの再開に先んじて漢方薬を選択することも考慮しうる思われた。

    【結語】 MVD術後の疼痛残存・再発例に対する漢方薬投与は,安全かつ有用な治療選択肢の一つと思われた。

  • 山田 哲久, 名取 良弘, 甲斐 康稔
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 8 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    治打撲一方は,脳神経外科領域では外傷による皮下血腫や術後の腫脹に対して投与されていると考えられる。しかし,ガイドラインなど統一した投与基準はなく,担当医の判断によるところが大きいと考えられる。当院脳神経外科での治打撲一方の投与の現状を調査し,効果を検討した。外傷による皮下血腫や術後の皮下腫脹に対して効果があり,有効と考えられた。外傷による痛みに関しては,効果判定に客観性がなく判断困難であった。器質化慢性硬膜下血腫に対する効果が期待される。

  • 柴田 靖
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 8 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    大建中湯とカルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) の相互作用を文献的に考察した。① 大建中湯は片頭痛を悪化させないと考えられる。② 大建中湯は,抗CGRP薬の治療効果には影響しない可能性が高い。③ 抗CGRP薬治療は大建中湯の効果を減弱させる可能性はあるが,間欠的に作用するため,臨床的問題にはならないと思われる。④ 大建中湯は抗CGRP抗体薬による便秘を改善する効果が期待でき,これを実際の複数の症例で確認した。

症例報告
  • 川尻 智士, 月輪 悠, 田井 克英, 四方 志昂, 木戸口 正宗, 赤澤 愛弓, 山内 貴寛, 東野 芳史, 磯崎 誠, 有島 英孝, 菊 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 8 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    アロディニア (allodynia,異痛症) は神経障害性疼痛の一環として生じ,ガイドラインに基づいた治療薬のみでは,痛みのコントロールが困難な場合がある。今回我々は,漢方医学的な証に対するアプローチが,アロディニアに対して有効であった症例を報告する。神経障害性疼痛に対する一般的な治療が無効な場合や,副作用の観点から使用を控えたい場合には,漢方薬が一助となる可能性がある。

  • 宇津木 聡, 小佐野 靖己, 遠藤 昌孝
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 8 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    80歳,男性。外傷がない意識障害で発症した左急性硬膜下血腫に対して,開頭血腫除去術を施行した。術後,遷延性意識障害となり,持続性の吃逆を呈するようになった。栄養管理目的で経管栄養を投与しつつ,吃逆に対し芍薬甘草湯の投与(7.5 g/日)を行った。芍薬甘草湯の投与により,吃逆の頻度はすぐに減少し,投与開始3日目には吃逆は消失し,芍薬甘草湯の投与も中止とした。芍薬甘草湯の投与を中止しても吃逆の再発はみられなかった。急性硬膜下血腫術後に伴う吃逆に対し,芍薬甘草湯は有効な治療法の一つと考えられた。

  • 玉野 雅裕, 高橋 元, 大城 信之, 岡村 麻子, 加藤 士郎, 中村 優子, 小倉 絹子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 8 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    多汗症は体温調節の範囲を超えて,多量の発汗があり,日常生活に支障をきたす場合が多い。特にストレス下に手掌,足底,顔面に生じる原発性局所性多汗症は思春期前後から若年に多くみられ,学業,勤務の支障にとどまらず,抑うつ,引きこもりをきたす場合も見受けられる。今回,外出時,人混みにおいて頭部,顔面,手掌を中心に極度の発汗をきたすため,外出恐怖症に陥った青年に四逆散が奏効した症例を経験した。四逆散がストレスを和らげ,交感神経を安定化させ,発汗をコントロールすることができるようになったと思われる。肝鬱型多汗症における四逆散の有用性が示唆された。

  • 吉田 賢作, 原田 佳尚, 堀野 雅祥, 菅 康郎, 肥後 拓磨
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 8 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    80歳女性,突然の呂律不良で発症,神経学的所見で左延髄外側症候群を呈し,頭部MRI検査で左延髄梗塞と診断し入院となった。咽喉頭内視鏡所見で左反回神経麻痺による左鼻咽腔閉鎖不良,左梨状窩の液体貯留,左喉頭運動障害,知覚,反射の低下を認めた。発症後1週間経過した時点で,易疲労感が強くなり,夜間の喉への唾液貯留で息苦しくなるため眠れないとの訴えがあった。延髄梗塞による咽喉頭機能異常により,唾液などの分泌液貯留が咽喉頭部の異常感覚の要因と考え,半夏厚朴湯を処方した。処方後より咽喉頭部の異常感覚による不眠なく経過し,第14病日に回復期リハビリテーション病院へと転院となった。

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