自然言語処理
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技術資料
健康危機管理と自然言語処理
奥村 貴史金谷 泰宏
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2013 年 20 巻 3 号 p. 513-524

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抄録

災害は被災地住民の健康に多大な影響を及ぼし,その対応に際し保健医療分野に膨大な文書を生じる.そこで,災害時の保健医療活動を支援するため,自然言語処理による各種文書の効率的処理が期待されている.本稿では,保健医療の観点から,そうした情報の特性を被災者,被災者集団,支援者のそれぞれについて整理したうえで,自然言語処理が有効と考えられる諸課題を列挙する.そのうえで,2011 年に発生した東日本大震災において筆者らが関わった日本栄養士会支援活動報告,石巻圏合同救護チーム災害カルテ,医療や公衆衛生系メーリングリスト情報の 3 つの事例を紹介し,「健康危機管理」に自然言語処理が果たしうる貢献について検討する.これらの事例に示されるように,災害時には保健医療に関わる膨大なテキストが発生するものの,保健医療分野の専門家は大量の自由記載文を効率的に処理する手段を有していない.今後,東日本大震災において生じたデータを活用し,保健医療情報における大量の自由記載文を効率的に処理する備えを行っておくことが望ましい.

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© 2013 言語処理学会
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