日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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活性酸素誘導型細胞死の細胞内ダイナミズム解析
*吉永 恵子川合 真紀有村 慎一堤 伸浩内宮 博文
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p. 138

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抄録
 動物細胞における細胞死促進因子Baxは、酵母や植物においても細胞死を誘引する(Kawai et al., PNAS 2001)。我々は、Baxが植物細胞中において、活性酸素を介し細胞死を引き起こすことを報告した(Kawai et al., Plant Cell 2004)。
 本研究ではBax形質転換シロイヌナズナとオルガネラ移行シグナルを有するGFP形質転換体との交配より得られた後代を作出し、細胞の観察を行った。これらの植物細胞ではBax発現後、原形質流動の停止がみられた。それに伴い、ミトコンドリアの桿状から球状への形態変化が起こり、葉緑体や液胞の選択的膜透過性が失われた。
 次に、外的ストレスに対する細胞内応答を観察することを試みた。すなわち、過酸化水素やサリチル酸処理により細胞死を誘導し、初期過程における細胞観察を行った。その結果、Bax誘導性細胞死と同様に、原形質流動の停止とそれに伴なうミトコンドリアの形態変化が確認された。植物細胞の原形質流動はアクトミオシン系により制御されている。そこでミオシンATPase阻害剤で葉を処理したところ、ミトコンドリアの流動性が失われ、イオンの漏出も起こった。従って、ATPやカルシウムにより制御される原形質流動の停止が細胞死を促進すると推測される。
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© 2004 日本植物生理学会
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