自然言語処理
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論文
誤り分析に基づく日本語事実性解析の課題抽出
成田 和弥水野 淳太上岡 裕大菅野 美和乾 健太郎
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2015 年 22 巻 5 号 p. 397-432

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抄録

事実性は,文中の事象の成否について,著者や登場人物の判断を表す情報である.事実性解析には,機能表現や,文節境界を越えて事実性に影響を与える語とそのスコープなどの 4 種類の問題が含まれており,性能の向上が容易ではない.本研究では,事実性解析の課題分析を行うために,機能表現のみを用いたルールベースの事実性解析器を構築し,1,533 文に含まれる 3,734 事象に適用した結果の誤りを分析した.このとき全ての事象表現について,付随する機能表現に対して人手で意味ラベルを付与した.その結果,主事象の事実性解析については,機能表現の意味ラベルが正しく解析できれば,現在の意味ラベルの体系と本研究で用いた単純な規則だけでも,90%に近い正解率が得られることがわかった.従属事象の事実性解析では,後続する述語やスコープといった従属事象特有の誤りが多く見られた.それらの要素についてさらなる分析を行い,今後の事実性解析の指針を示した.

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© 2015 一般社団法人 言語処理学会
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