2017 年 24 巻 1 号 p. 3-47
高齢者の認知症や孤独感の軽減に貢献できる対話ロボット開発のため,回想法に基づく傾聴を行う音声対話システムの開発を行った.本システムは,ユーザ発話の音声認識結果に基づき,相槌をうったり,ユーザ発話を繰り返したり,ユーザ発話中の述語の不足格を尋ねたりする応答を生成する.さらに,感情推定結果に基づき,ユーザ発話に対して共感する応答を生成する.本システムの特徴は,音声認識結果に誤りが含まれることを前提とし,音声認識信頼度を考慮して応答を生成する点である.110 名の一般被験者に対する評価実験の結果,「印象深い旅行」を話題とした場合で,45.5% の被験者が 2 分以上対話を継続できた.また,システムの応答を主観的に評価した結果,約 77% のユーザ発話に対して対話を破綻させることなく応答生成ができた.さらに,被験者へのアンケートの結果,特に高齢の被験者から肯定的な主観評価結果が得られた.