コミュニケーションロボットなどの会話エージェントが語りを聴く役割を担うことが期待されている.これらが聴き手として認められるには,語りを傾聴していることを語り手に伝達する機能を備える必要がある.このための明示的な手段は語りに応答することであり,傾聴を示す目的で語りに応答する発話,すなわち傾聴応答の表出が有力である.語りの傾聴では,語り手の発話を受容することが聴き手の基本的な応答方略となる.しかし,語りには,自虐や謙遜などの発話が含まれることがある.この場合,語り手の発話に同意しないことを示す応答,すなわち,不同意応答を確実に表出できることが求められる.本論文では,語りの傾聴において不同意応答を適切に生成することの実現性を示す.そのために,本研究ではまず,時間制約のない環境で語りデータに不同意応答のタイミングと表現をタグ付けする方式を定めた.作成したコーパスを用いて,不同意応答タイミングを網羅的に,不同意応答表現を安定的にタグ付けできることを検証する.続いて,事前学習済みの Transformer ベースのモデルに基づく,不同意応答タイミングの検出手法,及び,不同意応答表現への分類手法を実装し,実験により応答コーパスを用いた不同意応答生成の実現性を検証した.