2026 年 33 巻 1 号 p. 240-282
国語教育において記述式問題は広く用いられているが,誤答の内容は多様であるため,個々の答案に応じたフィードバックの提供には多大な労力を要する.本研究では,本文の論理構造を読解することが求められる記述式問題を対象に,学習者の答案に応じたフィードバックの自動生成手法を提案する.具体的には,本文の論理構造をグラフとして形式化し,各ノード間に論理関係を示すエッジを対応づけ,それらの論理的な繋がりを説明するフィードバック用のテンプレートを紐づけた答案診断グラフという枠組みを導入する.その後,学習者が解答する際に参照した本文の箇所(参照箇所)をこのグラフ上で特定する分類問題を解くことでフィードバックを生成する.実験では,技術的検証と国語教育の専門家4名による人手評価を実施した.技術的検証の結果として,推定参照ノードの精度を算出したところ,一部の設問を除き高い精度が得られ,人手評価の結果にも影響を与えていることが示唆された.人手評価では,「参照箇所の提示」「文章の論理関係の明示」「模範解答との差の提示」「納得感」の4観点に基づいて,提案手法と大規模言語モデル (LLM) による自動生成フィードバックを比較した.その結果,提案手法は全ての観点でLLMを上回る評価を獲得し,3名の評価者において,統計的に有意な差 (p < .001) が認められ,本手法の有効性が示された.