2026 年 33 巻 3 号 p. 1510-1554
日本の法令体系は階層構造を取っており,法令文では,自身より形式的効力の低い法令に対し詳細事項の規定を委ねるという方式が多用されている.このように,上位法令が下位法令に詳細規定を委任することを法令間の委任関係という.委任関係を含む法令の読解においては,詳細規定を定める下位法令を頻繁に確認しながら条文を解釈する必要があるため,読み手の負担が大きい.そのため,委任関係を即時に確認可能にして読み手を補助する仕組みの整備が求められている.しかし,委任関係のアノテーションを人手で行うには,広範な法的専門知識の習得,委任元及び委任先となりうる多数の法令・条文の精査,新規法令や改正法令に対する継続的対応などが必要であり,大きな作業負荷が生じる.そこで本研究では,委任関係の自動特定により人手アノテーションの負荷軽減を試みる.本稿では,委任関係を示すキーワードの抽出と,各キーワードに対応する委任先条文の特定という二段階のパイプラインシステムを構築し,委任関係候補を自動的に抽出する.具体的には,固有表現抽出タスクとして委任関係キーワード抽出を行うモデルと,エンティティ曖昧性解消タスクとして委任先を特定するモデルを作成する.実験の結果,人手アノテーション支援の用途においては十分なモデル性能を達成した.