外国人被告人が公正な裁判を受ける権利を保障するためには法廷通訳人の存在が不可欠であるが,その人数は年々減少傾向にあり,また,国家資格が存在しないことから通訳の質の保証にも課題がある.本研究では,大規模言語モデル (LLM) を用いた法廷通訳および,検証通訳(法廷通訳人の通訳内容を検証する立場の通訳人)の実現可能性を検証する.具体的には,法廷通訳能力の検証を目的とした新たなデータセットを構築し,LLM による機械翻訳文を既存の評価指標を基盤として法廷通訳に適合するよう構成した評価指標に基づいて法廷通訳人が人手評価することで,LLM が法廷通訳として利用可能かを検証した.さらに,人手評価結果と LLM-as-a-Judge による評価結果を比較することで,LLM が検証通訳として機能し得るかを検討した.実験の結果,GPT-4oによる訳文は人手評価の平均スコアが77%~86%であり,他のシステムと比較して高い言語等価性を維持できることが確認された.一方で,法律用語や疑問文の訳出誤り,日本の司法制度に関する知識不足といった課題も明らかとなった.また,人手評価と LLM-as-a-Judge による評価との相関係数はほぼ全ての設定で0.4未満に留まり,現段階では LLM を検証通訳として用いることの困難さが示された.