自然言語処理
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名詞の指示性を利用した日本語文章における名詞の指示対象の推定
村田 真樹長尾 真
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1996 年 3 巻 1 号 p. 67-81

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抄録
日本語文章における名詞の指す対象が何であるかを把握することは, 対話システムや高品質の機械翻訳システムを実現するために必要である. そこで, 本研究では名詞の指示性と修飾語と所有者の情報を用いて名詞の指示対象を推定する. 日本語には冠詞がないことから, 二つの名詞が照応関係にあるかどうかを判定することが困難である. これに対して, 我々は冠詞にほぼ相当する名詞の指示性を表層表現から推定する研究を行なっており (M. Murata and M. Nagao 1993), この名詞の指示性を用いて名詞が照応するか否かを判定する. 例えば, 名詞の指示性が定名詞ならば既出の名詞と照応する可能性があるが, 不定名詞ならば既出の名詞と照応しないと判定できる. さらに, 名詞の修飾語や所有者の情報を用い, より確実に指示対象の推定を行なう. この結果, 学習サンプルにおいて適合率82%, 再現率85%の精度で, テストサンプルにおいて適合率79%, 再現率77%の精度で, 照応する名詞の指示対象の推定をすることができた. また, 対照実験を行なって名詞の指示性や修飾語や所有者を用いることが有効であることを示した.
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