自然言語処理
Online ISSN : 2185-8314
Print ISSN : 1340-7619
ISSN-L : 1340-7619
統一モデルに基づく話し言葉の解析
伝 康晴
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 4 巻 1 号 p. 23-40

詳細
抄録

近年の音声認識技術の進歩によって, 話し言葉の解析は自然言語処理の中心的なテーマの1つになりつつある. 話し言葉の特徴は, 言い淀み, 言い直し, 省略などのさまざまな不適格性である. 書き言葉には見られないこれらの現象のために, 従来の適格文の解析手法はそのままでは話し言葉の解析には適用できない. 本稿では, テキスト (漢字仮名混じり文) に書き起こされた日本語の話し言葉の文からその文の格構造を取り出す構文・意味解析処理の中で, 言い淀み, 言い直しなどの不適格性を適切に扱う手法について述べる. 本手法は, 適格文と不適格文を統一的に扱う統一モデルに基づいており, 具体的には, 係り受け解析の拡張によって実現される. まず, 音声対話コーパスからの実例をあげながら統一モデルの必要性を述べ, 次に, 本手法の詳細を説明した後, その有効性を解析の実例をあげるとともに実験システムの性能を評価することで示す. その結果, さまざまな不適格性を含む複雑な話し言葉の文が, 係り受け解析を基本とする本手法によってうまく扱えることを示し, さらに, 定量的にも, 試験文の約半数に完全に正しい依存構造が与えられることを示す.

著者関連情報
© 言語処理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top