自然言語処理
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話し言葉解析のためのコーパスに基づく優先度計算法
伝 康晴
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1997 年 4 巻 1 号 p. 41-56

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抄録
近年の音声認識技術の進歩によって, 話し言葉の解析は自然言語処理の中心的なテーマの1つになりつつある. しかし, 話し言葉の特徴である, 言い淀み, 言い直し, 省略などのさまざまな不適格性のために, 従来の適格文の解析手法はそのままでは話し言葉の解析には適用できない. 我々は, 適格文と不適格文を統一的に扱う統一モデルに基づく話し言葉の解析手法を提案した. この手法においては, 適格文の最適な解釈を求める処理と不適格性を検出・修正する処理がいずれも, 最も優先度の大きい依存関係解釈を求めるという形で実現される. 本稿では, この解析手法で用いるための優先度計算法について述べる. 本手法は, コーパスに基づく手法であり, 解釈の優先度はその解釈が学習データ中でどのくらいの頻度で生じているかに応じて与える. この際, 学習データの希薄性の問題を回避するために, 解釈の候補と完全に一致する事例だけでなく類似した事例も考慮する. 本稿では, まず, 我々の話し言葉の解析手法の概略を説明し, 次に, 本手法の詳細を説明した後, 本手法を話し言葉の構文・意味解析システム上に実装し, その性能を評価することで本手法の有効性を示す. その結果, オープン試験で, 約半数の文に完全に正しい依存構造が与えられることを示す.
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© 言語処理学会
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