科学技術社会論研究
Online ISSN : 2433-7439
Print ISSN : 1347-5843
講演録
高等教育の大衆化と科学研究
潮木 守一
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2017 年 13 巻 p. 13-23

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抄録

 第二次世界大戦以前,各国の大学はそれぞれ個性を持ち,何らかの単一の尺度で測定し,その順位を比較する習慣はなかった.しかし大学の増設が始まるとともに,すべての大学を同一のものとみなすことが困難となり,ここに大学評価という課題が生じ,その評価結果に基づいて予算を傾斜配分する仕組みが登場した.大学を教育機関の観点からみれば,大学が地理的に分散していることが必要だが,研究機関の観点からみると,すべての大学に同じ研究施設・器具を配置することは非効率的である.そこから評価に基づく重点配置が必要となった.財政権を持つ政府は,財政難のなかこうした評価に基づく傾斜配分を主導した.他方アカデミック・コミュニティでは人文・社会科学を含めて,研究の水準についての評価があったが,多くの場合その情報はアカデミック・コミュニティ内部に留められ,外部に出ることはなかった.さらに世界的な規模で大学を評価する動向が生まれると,政府は自国の大学について無関心でいることができなくなり,たとえば研究,施設の配置計画に一定の影響力を発揮することとなった.

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© 2017 科学技術社会論学会
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