科学技術社会論研究
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最新号
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巻頭言
短報
  • 鈴木 俊洋
    2024 年22 巻 p. 11-21
    発行日: 2024/01/28
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,科学論の「第三の波」と呼ばれる立場について説明することである.まず,科学論の三つの波という図式がどのようなものかを説明する.次に,「第三の波」の柱の一つである「専門知論」について事例とともに紹介し,それが我々にいかなる教訓をもたらすかを提示する.続けて,「第三の波」のもう一つの柱である「選択的モダニズム」を取り上げ,我々が知の基準とし科学を選ぶべき理由について,科学者コミュニティの「形成的意志」などの概念を使って説明する.最後に,我々の社会において,科学を民主主義との関係でどのように位置づけたらよいかを論じ,「フクロウ委員会」という新しい専門家助言制度について説明する.

  • 城山 英明
    原稿種別: 研究論文
    2024 年22 巻 p. 22-29
    発行日: 2024/01/28
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

     科学技術に関わる政策過程において専門家の担う政治的役割が多様であること,そのような役割には限界があることを,食品安全委員会,原子力規制委員会,新型コロナウイルス感染症対策専門家会議,新型コロナウイルス対策に関する分科会といった様々な事例を通して確認した.その上で,専門家レベルの裁量の適切性を確保するためには,決定に参画する異なる分野の専門家による相互のコミュニケーション,社会のステークホルダーからのインプットの確保が重要となること,専門家レベルでの幅広い分野横断的調整に限界がある場合には専門家レベルの調整と政治レベルの調整の接続が不可欠となる点を指摘した.

  • コリンズ&エヴァンズの専門知論と科学コミュニケーションの垂直モデル/水平モデル
    内田 麻理香
    原稿種別: 研究論文
    2024 年22 巻 p. 30-42
    発行日: 2024/01/28
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

     科学コミュニケーション分野では,理論家も実践家も欠如モデル的思考様式とは距離をとるべきだと主張してきたが,欠如モデルという概念そのものが,科学コミュニケーションの理論構築や実践活動に混乱をもたらすものであった.そこで,本稿では欠如モデルにかわる対概念として,垂直モデル/水平モデルを用いる.垂直モデルは科学者が自文化であると認識する科学のみが自然かつ合理的な唯一の視点と考える態度で,水平モデルは科学者以外の他者の文化も認める態度になる.ただ,水平モデルは科学的価値の過度な相対化を帰結するのではないかという懸念を引き起こす恐れがある.そこで,コリンズとエヴァンズが展開した選択的モダニズムの議論を基盤にして,水平モデルが科学の相対化を必ずしももたらさないことを示す.その上で,コリンズらの専門知論とこの垂直モデル/水平モデルを用いて,科学コミュニケーターのタイプを8 つに分類する.

資料
原著
  • 生殖市場をうむ制度的要因の検討
    村瀬 泰菜
    原稿種別: 研究論文
    2024 年22 巻 p. 51-63
    発行日: 2024/01/28
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

     生殖技術の発展は地域間の経済格差や制度上の差異と相俟ってグローバルな生殖市場を生み,今や不妊のカップルや個人,あるいは配偶子提供者や代理母は,生殖技術を利用/提供するために国境を越える.現代の欧州においてこの「国境を越えたリプロダクティブ・サービス(cross-border reproductive services: CBRS)」の拠点の一つとなっているのが,チェコ共和国である.

     本研究は,なぜチェコがCBRSの受入国となるのかという問いに関して,(1)生殖技術の規制枠組み,(2)医学的アクセシビリティ,(3)生殖サービスの価格という3 つの分析視角から制度的要因の検討を行う.結論として,(1)生殖技術に関する規制の緩さ,(2)医学的アクセシビリティの高さ,(3)生殖サービスの価格のクライアントにとっての安さおよび代理母にとっての報酬の高さといった要因が絡み合い,西欧からはクライアントが,東欧からは代理母が生殖サービスの利用/提供のためにチェコを訪れると示される.

  • 生命科学ジャーナルCellを事例に
    有賀 雅奈
    原稿種別: 研究論文
    2024 年22 巻 p. 64-81
    発行日: 2024/01/28
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究では現代の生命科学論文の図のカラー化の進行を明らかにしたうえでその要因を技術面や科学実践・認識面の変化などから考察し,課題を検討することを目的とした.分析対象としたのは1974 年創刊の学術ジャーナルCellである.Cellの研究論文を5 年おきに20 記事抽出したうえで5952 のグラフィックに分割し,グラフィックのカラー化がどのように進行したか分析した.分析の結果70 ~80 年代はほとんどがグレースケールだったのに対し,90 年代からカラーのグラフィックが増加し,2000 年代にカラーのグラフィック数がグレースケールを超えていたことが明らかになった.その要因として本稿ではデジタル化と実験技術の変化,実験結果の多重化・複雑化,図の出力方法の変化,研究者の動機,図制作方法の変化を指摘した.また,図の適切な利用と解釈を促すために,研究者へのビジュアルデザイン教育や図のリテラシー教育,色の標準化,色による悪意のある誘導の防止策とカラー料金の金銭的負担について検討する必要があることを指摘した.

  • 先端的脳神経科学のELSIをいかに論じるべきか
    石田 柊, 標葉 隆馬
    原稿種別: 研究論文
    2024 年22 巻 p. 82-100
    発行日: 2024/01/28
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

     脳神経科学とその応用技術の発展に伴い,欧州を中心として,ヒトの脳活動を保護するための新しい人権理解として脳神経関連権(neurorights)という枠組みが注目されている.他方で,この枠組みの人権理解としての新しさには論争がある.本論文では,この新語をとりまく論争を概観したのち,この概念の意義について二つのことを論じる.第一に,脳神経関連権という考え方の前提には,「脳への介入により人格が変わる」など,経験的に確立されているとはいえない懸念も含まれる.これを喫緊の課題として論じるのは不適切かもしれないが,予見的議論として論じることはRRIの観点から求められる.第二に,脳神経関連権は,脳神経倫理学の研究蓄積にもとづいているとはいえ,その内容は既存の人権理解の拡張であり,理論的に平凡ですらある.しかし,脳神経科学の急速な進展とガイドラインの不在から先端的脳神経科学のELSIやRRIの議論への関心が高まっている現状に鑑みて,議論枠組みの平凡さはかえって合意のしやすさという点で美点であり,さらなる議論を促す上で有用である.

研究ノート
  • 実務的課題と推進方策
    小野田 敬, 伊藤 泰信
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年22 巻 p. 103-109
    発行日: 2024/01/28
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

     知識生産環境が高度に複雑化した現代社会では,アカデミアが社会に関わる活動において様々なステークホルダーとの連携が求められている.研究開発を効率的に高める可能性を持つと期待が集まるオープンイノベーションに関しても,これまではどちらかというとインダストリーを中心にみられたこの潮流だが,昨今ではアカデミアも巻き込んだ幅広い活動として認識されるようになっている.またアカデミアと社会との関わりは,インダストリーにとどまらず,環境問題や医療問題における市民や患者など市民社会との連携が進んでいる.アカデミアと多様なステークホルダーとの連携を継続して推進するためには,アカデミアと多様なステークホルダーとの共創関係の構築が求められているが,その検討はまだ始まったばかりである.そこで本稿では,アカデミアによる共創関係の構築に際して,主に実践的な側面からその課題と推進方策について論点を整理する。

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