科学技術社会論研究
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短報
「遺伝子検査」へのダブルスタンダードと不透明な未来
武藤 香織
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2019 年 17 巻 p. 129-139

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抄録

 本稿では,いわゆる「遺伝子検査」の日本国内の規制状況を論じる.「遺伝子検査」の規制には2 つの省が関与する.厚生労働省は,診断的検査(発症前遺伝学的検査を含む)を所掌する.健康・医療戦略の閣議決定(2014)までゲノム医療が推進されなかったため,保険収載済みの検査は74 項目に留まる.経済産業省は,DTC検査や診療所で販売される消費者向け検査を所掌するが,その質は規制せず,業界団体が自主的に管理する.だが,これら2 つの「遺伝子検査」を消費者が区別することは困難であろう.米国では,食品医薬品局(FDA)が全ての「遺伝子検査」を所掌し,上市前承認の要否判断にはリスク別アプローチを採用した.FDAの方針に則ると,日本の消費者向け検査の大半は販売禁止となるが,一部の発症前遺伝学的検査は消費者への直接販売が可能だ.日本の原則なきデマケーションを見直し,消費者が「遺伝子検査」のリスクを理解できる基本方針を示すべきである.

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© 2019 科学技術社会論学会
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