科学技術社会論研究
Online ISSN : 2433-7439
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原著論文
遺伝子組換え技術の登場と科学者の社会的責任論
日本における生命科学・ライフサイエンス論の場合
田中 丹史
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2019 年 17 巻 p. 179-192

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抄録

 本稿は生命科学・ライフサイエンス論の3 人の著名な研究者の見解を科学者の社会的責任論の観点から考察した.まず分析対象とするのは江上不二夫の見解である.江上の特徴は生命科学・ライフサイエンスを人文・社会科学を含む学際領域と捉えた点にあり,その研究審議の結果を踏まえて市民との対話の必要性も説いている.続いて取り上げるのは、中村桂子の議論である.中村は基礎研究の段階から,生命科学・ライフサイエンスには科学コミュニケーションが重要になることを主張していた.さらに1990 年代以降,生命誌の研究に移行すると,科学者の内的責任と外的責任の双方が当然視されるような世界観を打ち出している.最後に取り上げるのは,渡辺格の主張である.渡辺の生命科学・ライフサイエンス論の特徴は淘汰されるマイノリティもコミュニケーションに参加すべきとした点にある.3 人の主張はそれぞれ科学者の社会的責任論を展開していた点に特徴があると言える。

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© 2019 科学技術社会論学会
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