科学技術社会論研究
Online ISSN : 2433-7439
Print ISSN : 1347-5843
短報
人体の商品化と生権力
廣野 喜幸
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 17 巻 p. 18-36

詳細
抄録

 1980 年代のバイオテクノロジーの進展は人体の商品化を可能にし,資本システムは実際に人体を商品化してきた.先進諸国は臓器売買を禁じる法律を制定したが,発展途上国では(特にイランでは国家主導で)売買がなされている.経済的アクターによる生権力は,近代世界システムが外部を周辺化したさいに,強制労働という規律権力で始まり,18~19 世紀を中心とする黒人奴隷制度で「生き続けよ,そうでなければ死に廃棄せよ」とする生権力の形態をとり,それが引き続き人体のパーツに達したと解釈できる.このタイプの経済的生権力は近代世界システム論のいう半周辺地域に,より深く浸透しているが,この機序の詳細を解明することが今後の課題となろう.

著者関連情報
© 2019 科学技術社会論学会
前の記事 次の記事
feedback
Top