2020 年 18 巻 p. 137-146
再生医療は社会から高い注目を集めており,その成果は社会のあり方自体に大きなインパクトを与える可能性がある.そのため本格的な普及が始まる以前の段階から,研究者や医療従事者と社会の広い層がその有用性とリスクの理解を共有し,患者が研究や治療への参画を判断する基盤を整えることが重要である.研究機関や企業の広報では,研究成果を発信する際にある程度の宣伝の色彩はやむを得ない部分があるが,学会という非営利セクターが主体となる場合は,客観的かつ冷静な情報発信による知識基盤の整備へとつなげられる可能性がある.本稿では日本再生医療学会が実施してきた事業を紹介し,エマージングテクノロジーに関するコミュニケーション,あるいはそうした活動に関する患者・市民参画のモデルを構築する一助としたい.